りんてつのゆる記〜クルマと日々の思ひ出〜

クルマ好きとしてすくすく育った20代♂りんてつです。試乗インプレや日々のこと、ゆるーく記します。

【番外】トヨタ・スープラ・入社式とその考察

豊田社長がスープラのエンジンを吹かすという演出を行ったトヨタ自動車の入社式が話題になりましたね。YouTubetwitter等でもある程度知名度のある方が、この件に関して意見を発信し、バズっていました。

この件に関して、私もイチ車好きとして考察してみようと思い、この記事を書くことにしました。

ちなみに私はトヨタ信者ではありません。正直にいえば好きなトヨタ車は非常に少ないです。

f:id:tohru_quattro-m19:20190410194319j:image

このYouTubetwitterで発信した内容をご存知の方は多くいらっしゃるかと思いますが、考察のためにも以下にその内容を要約してみます。

twitter

トヨタ自動車の豊田社長が、入社式会場に持ち込んだスープラのエンジンを掛けて吹かすという演出をした。密閉空間でエンジンを吹かすというのは健康上よろしくない。新入社員にそのような歓迎をするトヨタ自動車は時代錯誤な考えの会社だから、はやめに転職を考えたほうがいい。」

YouTube

「現在の自動車業界には、全体的に電動化の波が来ている。アメリカではTeslaが非常に普及しているし、これは社会と世界の流れとして間違いない。しかし、トヨタ自動車は未だにスープラのエンジン音をひけらかして喜んでいる。そんな経営陣は時代錯誤で無能だ。かつてフォルクスワーゲンが窮地に立たされたように、このままではトヨタ自動車も長期的視点では非常に不安がある。現経営陣は退陣すべきだ。」

このように要約して問題ないかと思います。もしも発信者様の意図と大きく異なる点があれば、申し訳ありません。

 

 

トヨタの入社式について〜

上に挙げた発言内容について、いくつかの項目に分けて考察していきます。まずはトヨタ自動車の入社式での出来事についてです。

これに関してはtwitter場でも様々な意見が交わされた模様ですね。クルマが大好きな私個人としては、この演出は粋なモノだと感じました。他社ではまず行われないことでしょうし、クルマを五感で感じるということは、クルマの魅力を深く知るために大切なことだと思っているからです。

しかし、トヨタ自動車という世界的大企業の動きとして考えると、非常識との指摘を受けても仕方がないと思います。なぜならこの演出は不可欠なものではなかった上に、このような批判を受ける可能性が十分に予測できたからです。情報過多とも言われる現代において、大きな流れとなりかねない批判を予め回避する策を取る必要が企業にはあるのではないでしょうか。それは会社自身のためであり、世界的大企業であればなおさらのことでしょう。

 

 

〜今後の自動車業界について〜

次に、これからの自動車業界を電気自動車が席巻するということ、そして、エンジンを積む自動車はどうなるのかという点について考察します。


◯電気自動車が席巻するのか?

この点に関しては、大まかにはそのような流れになっていくと思います。クルマ好きとしてはどこか寂しい気もしますが、仕方のないことです。限りある資源であるガソリンや軽油を燃やし、地球温暖化につながる二酸化炭素を排出して走るという仕組みが、前時代的なものになるのは時間の問題でしょう。

f:id:tohru_quattro-m19:20190410194451j:image

しかし、この流れが本当に地球環境に対しての貢献になるようにするためには、いくつか乗り越えなければならない壁があるのも事実です。件の発信者様も触れていましたが、まずは「電気自動車に供給する電力の多くが火力発電によって生み出されている」という事実に端を発します。火力発電を用いて発電しているということは、その電気が発生する段階で化石燃料が使用されているということに他なりません。エンジンがガソリン等の燃料からパワーを発生させる効率と、火力発電の発電効率の比較は難しいところがありますが、火力発電の効率を上げるに越したことはありません。それに加えて、発電方法の主流を火力発電からその他の方法へとシフトしなければ根本的な問題解決は図れません。

また、この議論よりもさらに問題となるのが、電気自動車の生産段階における環境へのダメージです。電気自動車にはエンジンやトランスミッションが搭載されていません(多くの場合)が、そのかわりにモーターやバッテリーが積まれています。特に大容量で耐久性の高いバッテリーは開発が難しく、大きな課題の一つです。そしてこのバッテリーの生産には多くの電力に加えてレアメタル等の素材も必要になります。レアメタルは掘削に非常に大きなエネルギーを必要とし、その段階で多量の化石燃料や電力を必要とするのです。レアメタルの再利用技術も進んでいますが、それでも足りない分(多くの分量)を新たに掘削・抽出する必要があることに変わりはないのです。

f:id:tohru_quattro-m19:20190410194404j:image

このように(上記内容でも完全に不十分ではありますが)電気自動車がもたらす環境への影響(プラス面マイナス面双方)は、開発・生産段階から考えなくてはならない、非常に複雑な問題なのです。「石油関係の利権を持つ者の発言に惑わされるな」といった主張もありましたが、それを抜きにしても簡単に比較できるものではないのです。事実、私自身もこの記事を書くにあたってその問題の複雑さと自分の知識不足を痛感しました。

内燃機関自動車と電気自動車の比較にここで答えを出すことはできませんが、ある程度知名度と注目度のある方であるからこそ、今回の発言にはエビデンス不足を感じています。


○エンジン搭載車のこれから

おそらくこれから電気自動車の割合は格段に高くなる、これは上述の通りの見立てを持っています。ではガソリン車等の内燃機関車は消滅するのでしょうか?

私は消滅することはないと思っています。なぜならそこに「ガソリン車を愛する人たちがいるから」です。クルマ離れが叫ばれるこの時代においても、一定数のクルマ好きが存在するのは確かです。そしてそのうちのさらに一定数はエンジン音が好きであったり、エンジンの回転フィールを楽しんでいます。世の中にニーズがある以上、ビジネスの世界でこれが完全に見捨てられることはそう簡単にはないはずです。

f:id:tohru_quattro-m19:20190410194422j:image

しかし、多くの国家で規制がかけられるのも事実です。それではどのようなカタチで生き残るのか?それは「高級趣向品」としての道だと思います。つまり、多額のお金を払ってでも手に入れたい人だけが購入できる、高級品になるということです。ポルシェやフェラーリランボルギーニ等をイメージすると分かりやすいのではないでしょうか。上に挙げた3社も環境性能向上に取り組んではいますが、おそらく純然たるスポーツカーも長期に渡って生き残るように計らうはずうです。

内燃機関車が圧倒的少数になれば環境への悪影響は抑えられますし、国はそこから多額の税収を上げる制度を作ることもできます。そしてそのメーカーも利益を上げることが出来る、おそらく問題の少ないサイクルが出来上がるのではないでしょうか。

 


〜なぜトヨタが件の演出を行ったか〜

ではなぜトヨタスープラのエンジンを室内で吹かすような行動に出たのでしょう。それは、トヨタが上記のような「高級趣向品であるスポーツカー」を生産し続ける意志があるからなのではないでしょうか?いや、もしかするとそれらを主力とするメーカーへの転身(もしくはブランドの立ち上げ)が視野に入っている可能性も完全否定はできません。

f:id:tohru_quattro-m19:20190410194437j:image

最近のTVCMで豊田社長も競走馬の例を用いて話をしていますが、クルマ好きの1人である豊田社長は、スポーツカーを自社のラインナップから消し去りたくないのだと思います。公私混同との声もあるでしょう。しかし、好きなことで大成した経営者はたくさんいます。好きなことだからこそ出来ることもあります。

私は決してトヨタ信者ではありませんが、そんな姿勢が本当にトヨタ内部にあるとすれば歓迎すべきものだと思います。

また、電気自動車への移行についても熟考のうえでその可否を決めてほしいというのが個人的な意見です。